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2026.08.16

第5回

初めてのトイレ介助|「恥ずかしい」に寄り添うのも介護技術

介護の仕事を始めたばかりの人が、最初に戸惑いやすい仕事の一つがトイレ介助です。

「どこまで手伝えばいいんだろう」

「何て声をかければいい?」

「ズボンを下ろすところまで手伝って大丈夫?」

「失敗してしまったとき、どう対応すればいい?」

最初は分からなくて当然です。

でも、利用者さんにとって排泄は毎日の生活の一部であり、同時にとてもプライベートな行為でもあります。

だからトイレ介助では、安全だけではなく、

「恥ずかしさへの配慮」

がとても大切になります。


① いきなりトイレへ連れて行かない

利用者さんが落ち着かない。

立ち上がろうとしている。

何度も周りを見ている。

そんな様子を見たとき、

「トイレですね!行きましょう!」

と決めつけてしまうのは避けたいところです。

まずは、

「どうされましたか?」

「お手洗いに行かれますか?」

と確認します。

介護では、相手の気持ちを確認してから動くことが基本です。

本人が「行きたい」と言えば、

「分かりました。一緒に行きましょう」

と案内します。


② トイレ介助は「声かけ」がすべての始まり

トイレに到着したら、すぐに身体を触るのではありません。

例えば、

「今から立ちましょうか」

「ズボンを少し下げるのをお手伝いしますね」

「ゆっくり座りましょう」

と、これから何をするのか伝えてから介助します。

突然身体を触られたり、服を下ろされたりしたら、誰でも驚きます。

介護される側になったつもりで考えてみることが大切です。


③ 見られない・聞かれない配慮をする

排泄介助では、プライバシーへの配慮が欠かせません。

ドアを必要以上に開けたままにしない。

他の利用者さんや職員の前で、

「〇〇さん、うんち出ました?」

などと大きな声で話さない。

必要以上に身体を露出させない。

こうしたちょっとした配慮で、利用者さんの安心感は大きく変わります。

介護では、

「安全だから何をしてもいい」

わけではありません。

安全と尊厳。

両方を守ることが大切です。


④ できることまで全部やらない

利用者さんが自分でズボンを下ろせる。

手すりにつかまって立てる。

自分で身体を拭ける。

そんな場合は、できる部分まで介助者が奪わないようにします。

例えば、

「ここまではご自分でできますか?」

「難しいところだけお手伝いしましょうか?」

と確認します。

介護初心者の頃は、

「全部やってあげる方が親切」

と思いやすいのですが、そうとは限りません。

自分でできることを続けてもらうことも、大切な介護です。


⑤ 一人で難しいと思ったら無理をしない

トイレ介助では、

立ち上がりが不安定。

急に力が抜ける。

ふらつきがある。

身体を支えるのが難しい。

といったことがあります。

そんなとき、

「一人でやらないと」

と思わないでください。

「手伝ってください」

と言えることも大切な技術です。

利用者さんごとに介助方法は違います。

初めて介助する利用者さんの場合は、

「この方のトイレ介助はどうやりますか?」

と先輩職員に必ず確認しましょう。

事業所で決められた介助方法や、その人の介護計画に沿って行うことが基本です。


⑥ 排泄の失敗を責めない

間に合わなかった。

服を汚してしまった。

床を汚してしまった。

そんなこともあります。

そのときに、

「またですか?」

「さっきトイレ行ったでしょ」

「なんで言ってくれなかったの?」

と責めるような言葉は避けます。

本人自身が一番、

「恥ずかしい」

「迷惑をかけてしまった」

と思っているかもしれません。

そんなときは、

「大丈夫ですよ。着替えましょう」

「気にしなくて大丈夫ですよ」

と落ち着いて対応します。

失敗したことではなく、安心してもらうことを優先してください。


⑦ トイレ介助では「いつもと違う」に気づく

排泄介助は、体調の変化に気づける場面でもあります。

例えば、

いつもより排尿が少ない。

何度もトイレに行く。

便がいつもと違う。

排泄時に痛そうな表情をする。

急にトイレの回数が増えた。

こうした変化に気づいたら、自分だけで判断せず、

「いつもと違います」

と先輩職員や看護職、責任者へ報告します。

前回の「報告・連絡・相談」がここにつながってきます。

介護は、一つひとつの技術が別々なのではなく、全部つながっています。


⑧ 終わったあとの声かけまでが介助

排泄が終わった。

服も整えた。

車椅子にも座った。

これで終わりではありません。

最後に、

「大丈夫ですか?」

「気分悪くないですか?」

と確認します。

そして手洗いや必要な衛生管理も、事業所のルールに沿って行います。

利用者さんが安心して元の場所に戻るところまでがトイレ介助です。


現場でよくある場面

新人職員が利用者さんをトイレへ案内しました。

利用者さんは立ち上がれる人です。

新人職員は心配になって、ズボンを全部下ろし、身体を支え、すべて介助しようとしました。

すると利用者さんから、

「自分でできるよ」

と言われました。

この言葉は大切です。

介護では、

「できないことを助ける」

だけではなく、

「できることを邪魔しない」

ことも大切だからです。

次からは、

「どこまでお手伝いしましょうか?」

と聞いてみる。

それだけで、その人に合った介助に近づいていきます。


新人さんが覚えてほしい5つnn1. 必ず声をかけてから介助する
突然身体を触らない。n2. プライバシーを守る
見られない、聞かれない配慮をする。n3. できることは本人にしてもらう
何でも介助者がやらない。n4. 無理をしない
難しいと感じたら先輩職員を呼ぶ。n5. 「いつもと違う」を報告する
排泄の変化も大切な情報。


トイレ介助は「作業」ではない

介護を始めたばかりの頃は、

「トイレに連れて行く」

「ズボンを下ろす」

「排泄してもらう」

「服を整える」

という作業に見えるかもしれません。

でも本当に大切なのは、その途中にあります。

恥ずかしくないようにする。

怖くないようにする。

自分でできることを大切にする。

失敗しても責めない。

それが介護です。

利用者さんが、

「この人なら安心してお願いできる」

と思える介助者を目指してください。

技術は後からついてきます。

最初は、

声をかける。
確認する。
焦らない。

そこから始めれば大丈夫です。