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2026.08.15

第4回

初めての移乗介助|車椅子への移動で絶対に焦らない

介護の仕事を始めて、最初に緊張する介助の一つが「移乗介助」です。

ベッドから車椅子へ。椅子から車椅子へ。トイレの便座へ。

先輩職員がやっているのを見ると簡単そうに見えるかもしれません。しかし、自分が実際に介助する側になると、

「落としたらどうしよう」

「ちゃんと立ってもらえるかな」

「どこを持てばいいんだろう」

と、一気に怖くなるものです。

だから新人さんには、最初に一つだけ覚えてほしいことがあります。

移乗介助は、力で持ち上げる仕事ではありません。

厚生労働省も、全介助が必要な人を人力だけで抱え上げることは原則として行わず、リフトやスライディングボードなど、本人の状態に合った福祉用具を活用する考え方を示しています。


① まず「移動させる」より「準備する」

新人さんほど、

「早く車椅子に移ってもらわないと」

と、介助そのものに意識が向きます。

でも安全な移乗は、動き始める前にほとんど決まります。

まず利用者さんの体調を見る。

「〇〇さん、今から車椅子へ移りましょうか」

と声をかける。

そして車椅子の位置を確認する。

ブレーキがかかっているか、フットサポートが上がっているか、車椅子に異常がないかを確認することは、厚生労働省の介護技術評価でも基本項目として示されています。

焦って介助を始めるのではなく、

「準備できた。じゃあ始めよう」

この順番を習慣にしてください。


② いきなり身体を引っ張らない

利用者さんがなかなか立てない。

そんなときに新人さんがやってしまいやすいのが、

腕を引っ張る。

脇を抱えて持ち上げる。

自分の力だけで立たせようとする。

という介助です。

しかし、利用者さんには、その人自身が使える力があります。

手すりを持てる。

足を床につけられる。

身体を前に倒せる。

立ち上がりの一部なら自分でできる。

その力を使ってもらうことも介護です。

厚生労働省の資料でも、足底を床につけることや、本人がアームサポートをつかむなど、残っている身体機能を活かした支援が示されています。

全部やってあげるのではなく、できることは本人にしてもらう。

これは自立支援にもつながります。


③ 声かけをしながら一緒に動く

突然、

「はい、立って!」

と言われても、利用者さんは身体の準備ができません。

だから、

「少し前に身体を倒しましょう」

「ゆっくり立ちますよ」

「せーのでいきましょう」

など、これから何をするのかを伝えます。

前回の「声かけ」と同じです。

介護する側には分かっている動作でも、利用者さんには分かりません。

動く前に伝える。
動いている途中も伝える。
終わったら確認する。

これだけでも安心感は大きく変わります。


④ 「重いから頑張る」は間違い

利用者さんを抱えて、

「うおっ……!」

と腰の力だけで持ち上げる。

これは介護技術ではありません。

介助者自身の腰にも大きな負担がかかります。

厚生労働省は、移乗・入浴・排泄介助などでの抱え上げについて、全介助が必要な場合にはリフトなどを積極的に利用し、座位保持が可能ならスライディングボードなど、その人に合った方法を検討するよう示しています。

一人で難しい。

重い。

怖い。

方法が分からない。

そんなときは、

「一人では無理です。手伝ってください」

これでいいんです。

無理をして事故を起こすより、二人で安全に行う方がはるかに大切です。福祉用具が使えず人力での抱え上げが避けられない場合にも、対象者の状態などを踏まえて複数人で対応する考え方が厚生労働省の指針に示されています。


⑤ 利用者さんによって介助方法は違う

ここは初心者さんに特に覚えてほしいところです。

昨日介助したAさんと、今日介助するBさん。

同じ方法とは限りません。

右足に力が入りにくい人。

左側に麻痺がある人。

立つことはできるけれど、方向転換が難しい人。

座る姿勢を保つことが難しい人。

その日の体調によっても変わります。

厚生労働省も、介助方法は利用者の状態、使える福祉用具、人数、環境などを考慮し、対象者ごとに決めて見直すことを求めています。

だから新人さんが、

「昨日こうやったから今日もこれでいい」

と自己判断するのは危険です。

分からなければ、

「〇〇さんの移乗方法を教えてください」

と先輩に確認してください。


⑥ 車椅子に座ったら終わりではない

無事に車椅子へ移れた。

「よし、成功!」

……まだ終わりではありません。

身体が傾いていないか。

深く座れているか。

足は安全な位置にあるか。

腕や手が車輪に巻き込まれる位置にないか。

苦しそうではないか。

移乗後の姿勢と体調まで確認します。厚生労働省の技能実習モデルでも、安定した座位、足の位置、手が車輪に巻き込まれない位置にあることなどが安全確認として示されています。

最後に、

「大丈夫ですか?」

と声をかける。

介助は「座らせた瞬間」ではなく、安全を確認して終わりです。


新人さんが今日から覚える5つnn1. 動く前に準備する — 車椅子・周囲・利用者さんの状態を確認する。n2. 必ず声をかける — 何をするのか伝えてから動く。n3. 本人の力を使ってもらう — 何でも介助者がやらない。n4. 無理に抱え上げない — 難しければ福祉用具や他の職員を頼る。n5. 最後まで確認する — 座った姿勢と体調を確認して終了する。


移乗介助で一番危ないのは「焦り」

新人さんは、時間がかかると、

「早くしなきゃ」

と思います。

でも介護では、

速い介助より、安全な介助。

利用者さんが安心できる。

介助する職員も無理をしない。

その両方が大切です。

最初から上手にできなくても構いません。

見てもらう。

教えてもらう。

一緒にやってもらう。

そして少しずつ覚えていけばいい。

介護技術は、

力ではなく、準備・観察・声かけ・安全確認の積み重ねです。

特に新人の間は、利用者さんごとに決められた介助方法と事業所の手順を必ず確認してから実施してください。