← 記事一覧へ
2026.08.13

第2回

介護初心者研修 第2回

利用者さんへの「声かけ」の基本

介護の仕事を始めたばかりの人から、よくこんな話を聞きます。

「利用者さんに何を話したらいいか分からない」

「無言になってしまう……」

「敬語で話した方がいい?」

「認知症の方には、どう声をかけたらいい?」

大丈夫です。

最初から会話が上手な人なんて、ほとんどいません。

そして介護の「声かけ」は、面白い話をすることではありません。

相手に安心してもらうための、大切な介護技術です。


① まずは「名前+挨拶」から

難しく考える必要はありません。

まずは、

「〇〇さん、おはようございます」

これだけでOKです。

できれば、利用者さんの正面や視界に入る位置から声をかけます。

突然後ろから、

「立ちますよ!」

と言われたらどうでしょう?

誰でもびっくりします。

介護する側は毎日やっていることでも、介護される側からすれば、自分の身体に関わることです。

まず存在を知らせる。
そして、これから何をするのか伝える。

これが基本です。


② いきなり身体に触らない

新人さんには、特に覚えておいてほしいポイントです。

例えば車椅子から立ってもらう場面。

何も言わずに腕を持って、

「はい、立って!」

これは避けたい声かけです。

まず、

「〇〇さん、今から立ちましょうか」

「お手伝いしますね」

と伝える。

相手の反応を確認してから介助します。

介護する側のタイミングだけで進めない。

これは非常に大切です。


③ 「できない」と決めつけない

新人の頃は、

「危ないから全部やってあげよう」

と思ってしまうことがあります。

でも介護では、

やってあげること=良い介護

とは限りません。

例えば服を着るとき。

ボタンを留めるのに時間がかかっている利用者さんがいたとします。

すぐに、

「私がやりますね」

と全部やってしまうのではなく、

「ゆっくりで大丈夫ですよ」

「難しいところだけお手伝いしましょうか?」

と声をかける。

時間がかかっても、自分でできることがあります。

待つことも介護です。


④ 子ども扱いしない

これは絶対に覚えてほしいことです。

利用者さんは高齢になり、介護が必要になったとしても、私たちより長く人生を生きてきた大人です。

だから、

「〇〇ちゃん」

「えらいね〜!」

「ちゃんと食べようね〜」

など、子どもに話すような言葉遣いには注意が必要です。

親しみやすさと、馴れ馴れしさは違います。

基本は、

人生の先輩として敬意を持って接すること。

慣れてきても忘れてはいけません。


⑤ 「ダメ!」ではなく理由を伝える

例えば利用者さんが突然立とうとしたとき。

危ない!

そんな場面では思わず、

「ダメ!座って!」

と言ってしまうことがあります。

もちろん転倒しそうな緊急時には、安全確保が最優先です。

でも落ち着いた後は、

「どうされましたか?」

と聞いてみてください。

トイレに行きたかったのかもしれません。

何かを取りたかったのかもしれません。

家に帰ろうとしていたのかもしれません。

行動には理由があります。

止めるだけではなく、

「なぜ、この行動をしたんだろう?」

と考える癖をつけてください。


⑥ 認知症の方に「さっき言ったでしょ!」はNGnn同じ質問を何度もされることがあります。

「今日は何曜日?」

答えて数分後、

「今日は何曜日?」

さらに数分後、

「今日は何曜日?」

忙しいと、

「さっき言いましたよ!」

と言いたくなることもあるでしょう。

でも本人にとっては、初めて聞いている感覚かもしれません。

「今日は木曜日ですよ」

と、できる範囲で落ち着いて答える。

そして何度も同じことを聞く場合は、

「なぜ何度も確認するんだろう?」

と考えてみます。

不安なのかもしれない。

予定が気になっているのかもしれない。

単純に答えるだけではなく、背景を見る。

これも介護です。


⑦ 分からなかったら「聞く」

利用者さんに何と言えばいいか分からない。

対応が正しいか分からない。

そんなときは先輩職員に聞いてください。

「〇〇さんには、どう声をかけたらいいですか?」

これで大丈夫です。

利用者さんによって性格も生活歴も違います。

同じ声かけが全員に通用するわけではありません。

だからこそ、

利用者さんを知ることが大切です。


声かけで一番大切なのは「うまく話すこと」ではない

介護初心者の人は、

「何か話さないと!」

と思って焦ることがあります。

でも無理に話題を作る必要はありません。

大切なのは、

話すことより、相手を見ること。

表情を見る。

返事を待つ。

話を聞く。

嫌そうなら無理をしない。

困っていそうなら声をかける。

そして笑顔で挨拶する。

まずは、それで十分です。


今日から覚えてほしい5つ

① 名前を呼んでから話す

② 介助する前に必ず声をかける

③ 相手の返事を待つ

④ 子ども扱いしない

⑤ 分からなければ勝手に判断せず聞く

介護は、身体を支えるだけの仕事ではありません。

「安心してもらうこと」も介護です。

そして、その第一歩が「声かけ」です。

最初はぎこちなくても大丈夫。

毎日利用者さんと接していれば、少しずつ自然になっていきます。

焦らず、一人ひとりの利用者さんと向き合っていきましょう。


次回予告

第3回「介護初心者が絶対に覚えておきたい“報告・連絡・相談”」

「これくらいなら報告しなくてもいいか」

介護現場では、その判断が大きな事故につながることがあります。

何を見たら報告するのか?
誰に伝えるのか?
どこまで伝えればいいのか?

次回は、新人さんが最初に覚えておきたい「報告」の基本を解説します。