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2026.08.14

第三回

介護初心者研修 第3回

報告・連絡・相談「これくらい大丈夫」が一番危ない

介護の仕事を始めたばかりの人に、絶対に覚えてほしいことがあります。

それは、

「自分だけで判断しない」

ということです。

介護現場では、こんなことが起こります。

「いつもより元気がない気がする」

「歩くとき、少しふらついていた」

「今日はご飯をあまり食べていない」

「トイレの回数が多い気がする」

でも新人さんほど、

「これくらいで報告していいのかな?」

と迷います。

答えは簡単です。

迷ったら報告してください。


① 「これくらい大丈夫」が一番危ない

例えば、利用者さんが立ち上がったときに少しふらついた。

でも転倒はしなかった。

本人も、

「大丈夫、大丈夫」

と言っている。

だから報告しなかった。

ところが、その後また立ち上がったときに転倒してしまった。

こうなると、

「あのときのふらつきを共有していれば……」

ということになります。

最初の小さな変化が、大きな事故の前触れだった可能性もあります。

新人さんに医学的な判断をしてほしいわけではありません。

必要なのは、

「いつもと違いました」

と伝えることです。

判断するのは、その後です。


② 何を報告したらいいの?

最初は難しく考えなくて大丈夫です。

例えば、

* いつもより元気がない
* 顔色が違う
* 食事量が少ない
* 水分をあまり飲んでいない
* ふらついた
* 転びそうになった
* 痛いと言っている
* 吐いた
* 咳が増えた
* トイレの回数がいつもと違う
* 皮膚に傷や赤みがある
* いつもより眠そう
* 普段と違う行動がある

こうしたことに気づいたら、まず報告します。

ポイントは、

「異常かどうかを自分で決めなくていい」

ということです。


③ 報告するときは「見た事実」を伝える

悪い報告の例です。

「〇〇さん、なんか変です。」

これでは、聞いた側も状況が分かりません。

では、どう伝えるのか。

「10時頃、〇〇さんが立ち上がったときに一度ふらつきました。転倒はしていません。本人は大丈夫と言われています。」

これなら状況が分かります。

大切なのは、

いつ・どこで・何があった・今どうなのか

です。

最初から完璧に話せなくても構いません。

まずは事実を伝えましょう。


④ 「あとで言おう」は忘れる

介護現場は忙しいです。

入浴介助をして、

トイレ介助をして、

食事の準備をして、

利用者さんから呼ばれて……。

そのため、

「これが終わったら報告しよう」

と思っていると、忘れることがあります。

重要な変化や事故につながりそうなことは、

できるだけその場で報告する。

これを習慣にしてください。

特に、

転倒・転落・出血・急な体調変化・意識状態の変化など、緊急性が考えられる場合は、その場で周囲に応援を求めます。

一人で何とかしようとしないことです。


⑤ ミスを隠さない

新人さんが一番怖いのは、

「怒られること」

かもしれません。

介助中に失敗した。

利用者さんをヒヤッとさせてしまった。

確認するのを忘れた。

そんなとき、

「言ったら怒られるかな……」

と思うことがあります。

でも介護では、

ミスそのもの以上に、報告しないことが危険です。

失敗したら報告する。

分からなかったら聞く。

間違えたら修正する。

これでいいんです。

隠してしまうと、次の職員が何も知らない状態で介助することになります。


⑥ 「ヒヤリ」で終わったことも大切

転倒しなかった。

ケガもしなかった。

事故にはならなかった。

だから何もなかった。

……ではありません。

例えば、

「車椅子から一人で立ち上がろうとしていた」

「床の段差につまずきそうになった」

「浴室で滑りそうになった」

「ベッドから落ちそうになった」

こうした、

事故にはならなかったけれど、危なかった出来事

も大切な情報です。

なぜなら、次は本当に事故になるかもしれないからです。

事故が起きてから考えるのではなく、事故になる前に防ぐ。

これが介護では非常に重要です。


⑦ 申し送りは「チームで利用者さんを守る」ため

介護は一人でする仕事ではありません。

朝の職員。

昼の職員。

夕方の職員。

看護職。

相談員。

管理者。

いろいろな人が利用者さんに関わります。

だから、自分が知った情報を自分だけで持っていてはいけません。

例えば、

「今日は立ち上がり時にふらつきがありました」

と共有されていれば、次の職員も注意して介助できます。

情報共有とは、

単なる業務連絡ではありません。

利用者さんをチームで守るための介護です。


⑧ 記録も大切

口頭で報告したから終わり。

ではありません。

必要な内容は記録にも残します。

ただし記録では、

「元気がなかった」

だけではなく、

「昼食時、普段は全量摂取されるが、本日は主食・副食ともに約半量摂取」

など、できるだけ事実を書くことが大切です。

「なんとなく」

ではなく、

自分が見たこと・聞いたこと・起きたこと

を残します。


新人さんに覚えてほしい5つ

① 見る

利用者さんの「いつもと違う」に気づく。

② 声をかける

本人にも状態を確認する。

③ 報告する

迷ったら先輩・責任者へ伝える。

④ 記録する

起きた事実を残す。

⑤ 共有する

次に関わる職員へつなげる。

この5つを覚えてください。


分からないことを聞ける人は強い

新人だから分からない。

それは当たり前です。

一番危ないのは、

分からないのに、分かったふりをすること。

「これって報告した方がいいですか?」

「この介助方法で合っていますか?」

「〇〇さん、いつもこんな感じですか?」

どんどん聞いてください。

介護は一人で完結する仕事ではありません。

気づく。
伝える。
相談する。
記録する。
そしてチームで共有する。

その積み重ねが、利用者さんの安全につながります。

新人のうちは特に、

「これくらい大丈夫」ではなく「念のため伝えておこう」

この感覚を大切にしてください。


次回予告

第4回「初めての移乗介助|車椅子への移動で絶対に焦らない」

ベッドから車椅子へ。

椅子から立ち上がる。

介護現場では毎日のように行う介助です。

でも、やり方を間違えると利用者さんの転倒だけでなく、介護職自身の腰痛にもつながります。

次回は初心者向けに、移乗介助をするときに最初に覚えてほしい基本を解説します。