第三回

介護初心者研修 第3回
報告・連絡・相談「これくらい大丈夫」が一番危ない
介護の仕事を始めたばかりの人に、絶対に覚えてほしいことがあります。
それは、
「自分だけで判断しない」
ということです。
介護現場では、こんなことが起こります。
「いつもより元気がない気がする」
「歩くとき、少しふらついていた」
「今日はご飯をあまり食べていない」
「トイレの回数が多い気がする」
でも新人さんほど、
「これくらいで報告していいのかな?」
と迷います。
答えは簡単です。
迷ったら報告してください。
① 「これくらい大丈夫」が一番危ない
例えば、利用者さんが立ち上がったときに少しふらついた。
でも転倒はしなかった。
本人も、
「大丈夫、大丈夫」
と言っている。
だから報告しなかった。
ところが、その後また立ち上がったときに転倒してしまった。
こうなると、
「あのときのふらつきを共有していれば……」
ということになります。
最初の小さな変化が、大きな事故の前触れだった可能性もあります。
新人さんに医学的な判断をしてほしいわけではありません。
必要なのは、
「いつもと違いました」
と伝えることです。
判断するのは、その後です。
② 何を報告したらいいの?
最初は難しく考えなくて大丈夫です。
例えば、
* いつもより元気がない
* 顔色が違う
* 食事量が少ない
* 水分をあまり飲んでいない
* ふらついた
* 転びそうになった
* 痛いと言っている
* 吐いた
* 咳が増えた
* トイレの回数がいつもと違う
* 皮膚に傷や赤みがある
* いつもより眠そう
* 普段と違う行動がある
こうしたことに気づいたら、まず報告します。
ポイントは、
「異常かどうかを自分で決めなくていい」
ということです。
③ 報告するときは「見た事実」を伝える
悪い報告の例です。
「〇〇さん、なんか変です。」
これでは、聞いた側も状況が分かりません。
では、どう伝えるのか。
「10時頃、〇〇さんが立ち上がったときに一度ふらつきました。転倒はしていません。本人は大丈夫と言われています。」
これなら状況が分かります。
大切なのは、
いつ・どこで・何があった・今どうなのか
です。
最初から完璧に話せなくても構いません。
まずは事実を伝えましょう。
④ 「あとで言おう」は忘れる
介護現場は忙しいです。
入浴介助をして、
トイレ介助をして、
食事の準備をして、
利用者さんから呼ばれて……。
そのため、
「これが終わったら報告しよう」
と思っていると、忘れることがあります。
重要な変化や事故につながりそうなことは、
できるだけその場で報告する。
これを習慣にしてください。
特に、
転倒・転落・出血・急な体調変化・意識状態の変化など、緊急性が考えられる場合は、その場で周囲に応援を求めます。
一人で何とかしようとしないことです。
⑤ ミスを隠さない
新人さんが一番怖いのは、
「怒られること」
かもしれません。
介助中に失敗した。
利用者さんをヒヤッとさせてしまった。
確認するのを忘れた。
そんなとき、
「言ったら怒られるかな……」
と思うことがあります。
でも介護では、
ミスそのもの以上に、報告しないことが危険です。
失敗したら報告する。
分からなかったら聞く。
間違えたら修正する。
これでいいんです。
隠してしまうと、次の職員が何も知らない状態で介助することになります。
⑥ 「ヒヤリ」で終わったことも大切
転倒しなかった。
ケガもしなかった。
事故にはならなかった。
だから何もなかった。
……ではありません。
例えば、
「車椅子から一人で立ち上がろうとしていた」
「床の段差につまずきそうになった」
「浴室で滑りそうになった」
「ベッドから落ちそうになった」
こうした、
事故にはならなかったけれど、危なかった出来事
も大切な情報です。
なぜなら、次は本当に事故になるかもしれないからです。
事故が起きてから考えるのではなく、事故になる前に防ぐ。
これが介護では非常に重要です。
⑦ 申し送りは「チームで利用者さんを守る」ため
介護は一人でする仕事ではありません。
朝の職員。
昼の職員。
夕方の職員。
看護職。
相談員。
管理者。
いろいろな人が利用者さんに関わります。
だから、自分が知った情報を自分だけで持っていてはいけません。
例えば、
「今日は立ち上がり時にふらつきがありました」
と共有されていれば、次の職員も注意して介助できます。
情報共有とは、
単なる業務連絡ではありません。
利用者さんをチームで守るための介護です。
⑧ 記録も大切
口頭で報告したから終わり。
ではありません。
必要な内容は記録にも残します。
ただし記録では、
「元気がなかった」
だけではなく、
「昼食時、普段は全量摂取されるが、本日は主食・副食ともに約半量摂取」
など、できるだけ事実を書くことが大切です。
「なんとなく」
ではなく、
自分が見たこと・聞いたこと・起きたこと
を残します。
新人さんに覚えてほしい5つ
① 見る
利用者さんの「いつもと違う」に気づく。
② 声をかける
本人にも状態を確認する。
③ 報告する
迷ったら先輩・責任者へ伝える。
④ 記録する
起きた事実を残す。
⑤ 共有する
次に関わる職員へつなげる。
この5つを覚えてください。
分からないことを聞ける人は強い
新人だから分からない。
それは当たり前です。
一番危ないのは、
分からないのに、分かったふりをすること。
「これって報告した方がいいですか?」
「この介助方法で合っていますか?」
「〇〇さん、いつもこんな感じですか?」
どんどん聞いてください。
介護は一人で完結する仕事ではありません。
気づく。
伝える。
相談する。
記録する。
そしてチームで共有する。
その積み重ねが、利用者さんの安全につながります。
新人のうちは特に、
「これくらい大丈夫」ではなく「念のため伝えておこう」
この感覚を大切にしてください。
次回予告
第4回「初めての移乗介助|車椅子への移動で絶対に焦らない」
ベッドから車椅子へ。
椅子から立ち上がる。
介護現場では毎日のように行う介助です。
でも、やり方を間違えると利用者さんの転倒だけでなく、介護職自身の腰痛にもつながります。
次回は初心者向けに、移乗介助をするときに最初に覚えてほしい基本を解説します。